vol.2 nanilani
デザイン&コンサルティング会社であるnanilani。
有志をつのり、仕事とは別に社会貢献活動にも取り組んでいる。
デザイン力、企画力を生かした「社会貢献」の形とは?
有志で集まったメンバー。左から、久田さん、西澤さん、稲田さん、小林さん。
「NPO法人はちどりプロジェクト(以下“はちどり”)」という学校建設や、手漉きの和紙(オークンコー)の生産などによってカンボジアのプレイキション村を支援する活動がある。会社の中で有志をつのり、その活動の協力をしているのがこの4名。そのキッカケとは?
「個人的に社会貢献活動にはもともと興味がありました。知人の結婚式で久しぶりに再会した友人がラオスで社会貢献活動をしており、さらに、その“はちどり”の理事も務めていました。話を聞くととても興味深く、そこから、何かnanilaniで出来ないか?という気持ちが高まりました。時を同じくして弊社の社長からも、社会貢献となる活動を始めたいという提案があったので、はちどりプロジェクトの話を伝えました。そうすると、社長も共感してくださり後押ししてくれて。そこで有志をつのって、nanilaniでの社会貢献活動がスタートしました」
ミーティングは、和気あいあいとした雰囲気で色々な角度から可能性を模索。
会社の中で有志をつのっての活動。仕事の時間を削るわけにはいかないので、仕事後に時間を作ってミーティングを。ミーティング後におのおの宿題を持ち帰り、また次のミーティングでそれぞれが提案をしながら話し合う。そういった流れで月に2,3回集まっているという。
「”はちどり“の場合は、“現地の人が作れるもの”が第一なので、その出来ることの中から何をしていくかという考え方が難しかったです。日ごろは“こうすると手にとってもらえる”とか“こうすればメッセージが伝わる”などを優先して考え、動いているので、元々の考え方ややり方を変えなければならないということに、最初は全員戸惑いました」
現地の人が出来ることは、こちらが考えているよりもちろん少ない。ハサミを上手に使えないのは当たり前。そういったこちらの常識やスピードを押し付けること無く、でも、出来ることの中で最大限いいものを創り上げるということ。最初は戸惑っていたメンバーも、そこに自然とフォーカスするようになっていく。THINKSでも、はちどりプロジェクト×nanilaniデザインのTシャツを取り扱っている。(http://thinksthinks.shop-pro.jp/?pid=112776882)
改良を重ねた結果、製品となったTシャツはこのwebでも取り扱い中。
「このTシャツも、初めにあがってきたサンプルでは縫製がやはり良くなくて。何度かやりとりさせて頂いていくうちに少しずつ改良されていき、良いものが出来上がりました。現地の方の出来ること、はちどりプロジェクトの方々のご意見などがあり、何かを提案してもなかなか実現までは遠い道のりだったりもしますが、そういった中でこうやって形になったものを見ると嬉しさもひとしお。これからも提案をしていきたいと思っています」
現地で実際にオークンコー作りも体験。
“はちどり”の最終目標は「カンボジアを支援の入らない国に」という想い。nanilaniのチームの何人かは、実際に現地に足を運び、現実をきちんと自分の目で見てきたそう。実際に目で見るとまた想像とは異なる想いが産まれる。
「直行で行くと5時間、値段も安い時は往復4万円だったり、想像よりもカンボジアが気軽に行けることにまず驚きました。そして、実際にプレイキション村へ行くことで、本当に何も無いんだということを目で見て実感しました。道なき場所に道を作っている人を見かけたり。工房も見学させてもらったのですが、みんなが楽しそうに話しながらのんびり作業をしていて、日本が考える仕事という概念との差も感じました。1番驚いたのは、オークンコーを作る時に最後に濡れた紙を乾かすのですが、それが床にワッーと貼ってあるんです。みんなが裸足でペタペタと歩き回るような床に。ここを使う?!と驚きましたが、でもそれはそこでは当たり前で。あるもの・あるスペースを工夫して作っているんです。その模索や想像力は、そこでしか生まれないですよね、きっと」
物がないからこその想像力、創造力の逞しさ。そして、物やスペースがないからこその大変さ。どちらも実際に目で見て改めて実感したそう。
「オークンコーのハガキを1枚作るのに時間と手間がとてもかかっているということもわかったので、失敗が出来る限り出ないように、失敗しにくい何かを作れるといいな、とも思いました。日本のような工場ではなくて、本当に普通の小屋。その光景を見たら、向こう側の常識を改めて実感し納得したんです」
今やっていることを“ボランティアをやっている”という感覚はあまりないそう。やりとりの中で自分たちも冒険をしてみたり、楽しんでいる。
「私たちも色々やってみながら勉強している感じです。これからこういった社会貢献に関わるお仕事をもっと増やせた時に、この経験を生かせられたらいいなぁと思います。今は新しい商品を開発中です。製品として完成度の高いものが作れるよう改良を重ねているところです」
今改良を重ねているという新商品のオークンコーを使ったモビール。
Edit & Text : Maki Kakimoto
Photo : Masaharu Arisaka(STUH) Direction : Naoko Ishii
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nanilani PROFILE
http://www.nanilani.com/ 東京都渋谷区富ヶ谷にある、デザイン会社。
2005年にデザイナーと編集者の2名で設立。戦略、デザイン、プロデュースの三本柱で、企業や商品・サービスのブランド構築に貢献する“ブランドアーキテクトカンパニー”。 社名の“ナニラニ”はハワイ語で「美しい空 という意味。
■CSRメンバー(2017.3月現在)
西澤千晶(Senior Producer)
久田幸弘(Art Director)
稲田綾子(Chief Designer)
小林愛(Designer)
■NPO法人 はちどりプロジェクト
はちどりプロジェクトは学校建設で始まり終わる予定だった小さな団体。しかし、学校があれば通学できるというわけではないカンボジアの現実を目の当たりにし、子ども達が不自由なく教育を受けられるように新たな活動をスタートしています。