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vol.8 株式会社ビヨンドワークス 代表取締役 佐々木康裕さん

1985年に「トゥモローランド」に入社以来、26年の間は営業企画、ブランドマーチャンダイザー、バイヤー、マーケティング、イベントプロデュース、販売促進部部長など様々な分野で活躍していた佐々木康裕さん。退社後は、株式会社「ドゥーブルアッシュ」創業、代表取締役に就任し、ライフスタイル雑貨など輸入総代理店業を行いその後、株式会社ビヨンドワークスを立ち上げ企画、コンサルティングを展開しながら様々な分野で精力的に活躍している佐々木さん。そんな彼が、新しい活動「Terakoya kagurazaka プロジェクト」も始めている。今までの経験を生かしながら、年齢や時代に合わせて新しいコトを提案し実現していく佐々木さんにお話を伺った。

場所は「Terakoya kagurazaka」の拠点でもある神楽坂の古民家。

多方面で活躍している佐々木さん。そのキッカケとは?

「大学進学のタイミングで東京に出てきて、その頃はバリバリの体育会系男子。でも幼い頃からオシャレが好きで、中学生の頃からメンズクラブとan anを愛読していました。なので、卒業後の進路を考えた時、ファッション関連がいいなぁと思い、トゥモローランドに新卒で入りました。入社当時はまだ創業して6年目だったので、まだまだ小さい会社でした。面白そうな提案をすると、社長が「やってみれば?」とチャンスをくれる、そんな風が社内には吹いていました。メンズ事業部を立ち上げさせてもらったり、バイヤー部門を作らせてもらったり、渋谷のトゥモローランドを作ったり、新しいことを形にしていくことが楽しくて夢中で働いていました。渋谷のトゥモローランドでは、洋服だけじゃなく、雑貨、時計、葉巻、香水など幅広く取り扱うことになったので、交渉から自分で担当して少しずつ作り上げていきました。その時に、香水やスキンケアなどの面白さを改めて知りましたね」

当時まだライフスタイルブームも来ていない時代に、ライフスタイル全般のアイテムを扱うセレクトショップを社長と二人三脚で作り上げた佐々木さん。その後50歳を迎えるタイミングで転機を感じたという。

「30歳で何かしたいな〜と思っていたけれど、企業の中でやりたいことをやらせてもらえるという環境のおかげでずっとそのまま動き続け…、いつの間にか50歳間近に。そんなタイミングで起こったのが、東日本大震災でした。改めて色々と考えさせられ、このタイミングを逃したら僕はまた60歳までずっとここにいるだろう、そう思い、思い切って独立したんです」

ファッション業界が洋服一辺倒の時代からライフスタイル全般に向かっていくであろうことは、30年ほど前から感じていたという佐々木さんは、独立を機にまずは香りブランドの輸入卸業を始める。

「ファッションはもう飽和状態だと薄々感じていました。そこに東日本大震災がおきて、全てがひっくり返った気がしました。「今は日本人が大人になってきている気がします。もっと幼稚で流されやすい部分があったのに、今はアイデンティティをしっかり持てるようになってきたと感じるんです。自分が60代に近づいてきた今、世代交代も始まり、芯のある若い人たちがたくさん日本各地で頑張っている。年齢などがボーダーレスになり、情報も豊富、島国である日本がやっと外に向かって動き出したんです。有名ブランドの高い服を纏い、どうだ!と自己顕示することで豊かさを感じる時代はもう終わったんですよね。心の豊かさ時代にシフトしたんです」

2017年以降コンサルティングのお仕事が中心になっていく中で自分が考えていることを発信できる場を作りたいと思い「寺子屋」という活動を始めました。トゥモローランド時代から、バイイングなどで年間120日くらいは海外で過ごしていたのですが、色々な人種や文化に触れていく中で、日本人や日本文化の素晴らしさを改めて感じてもいました。日本人はとてもポテンシャルは高いのに、どうしても存在は控えめになってしまう。控えめであることが日本らしくもあるのだけれど、もったいない部分もすごくあって。そこで、寺子屋というワークショップを開くことで、日本人の伝統、文化、様式、そういったものを、もう1度見直し、そしていずれは海外に伝えていくという活動が出来たらとても楽しいんじゃないかな、と思ったんです。そこで「Terakoya kagurazaka」という名前をきちんとつけて、動き出しました。今は2年目になります」

東日本大震災、50歳という区切り目により、思わぬ方向に仕事がどんどん広がっていく。それは佐々木さんが、経験によって生まれた小さな“気づき”を見落とさず、いいものは世の中に伝えていきたいという衝動を基に動いてきたからこそ。

「Terakoya kagurazaka」では昨年10回ほどワークショップを開いている。この味わい深い拠点も、有形文化財であるとのこと。日本の文化や伝統を伝えていく拠点として最適な場所といえる。

「今年の9月くらいにはパリで動き出すプロジェクトがあるんです。日本は経済面でリスペクトされるより、この高い文化度を発信していくべきだと思っていますから。改めて見直したり勉強し直すと、日本の文化って本当に独特で面白い。でも、お茶、漬物、味噌など、あたり前のこととして継承されてきたことは、今継承が途切れてきてしまっている。それは、核家族化の影響は大きいと思っています。でも、ずっと受け継いできたことって、学び直してみると、結局はとても理にかなっているんです。そこを少しずつ伝えていく手助けができたらと思って動いています。例えば、そもそも箸だけで最初から最後まで食事をするのは日本だけと言われています。そういうことも改めて考えてみると、とても面白くないですか? 切って、刺して、つまんで、運んで、それが全て箸一本で出来てしまう。日本の当たり前を掘り起こして、自分の体に身につけたり、学び直すと、改めてすごく腑に落ちるんですよ」

「How to live」どう生きるか。そこを常に考えながら仕事をしているという佐々木さんの仕事、そしてその働き方は「豊かさとは何なのか」もう1度考え直させてくれる。

Edit & Text : Maki Kakimoto Photo : Aya Sunahara Direction : Naoko Ishii

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佐々木康裕

株式会社ビヨンドワークス 代表取締役

1961年生まれ。1985年、株式会社トゥモローランド入社、26年に渡って在籍する。その間、営業、営業企画、生産管理、ブランドマーチャンダイザーなど、多岐分野で経験を積む。メンズ事業部創設、事業部長として営業、生産、販売促進、店舗運営の統括指揮。販売促進部部長として会社全体の販促、イベントのプロデュースなども行う。その後社長室長として新規事業の開発も指揮。丸の内店、渋谷店、Land of Tomorrowなど新業態のプロデュースも手掛ける。多くの海外訪問を通し異文化に触れることで審美眼を磨くとともに、さまざまな視点からのマーケティング分析に厚い信頼を得る。

2011年、株式会社ドゥーブルアッシュ創業、代表取締役に就任。海外のライフスタイル雑貨、香水、スキンケアブランドの輸入総代理店として活動を始める。またあわせて海外ブランドの開発、輸入代行業務も行う。

2012年、東京青山にライフスタイルコンセプトショップ「エルムタージュ(Heroomtage)」をオープン。そのコンセプト、品揃えのユニークさから多くのメディアで取り上げられる。

2014年、Heroomtage 青山店が世界最大のライフスタイル展示会「Maison & Objet ソサエティー」によって、Found MUJI などとともに世界の注目ショップ(2013年下期)16店に日本から選出され、パリで講演を行う。

同年、株式会社ビヨンドワークス設立、代表取締役に就任。

2017年4月、東京銀座に出来たG6内SIXIEME GINZAをディレクションし成功を収める。

いままでの経験やネットワークをベースに、ブランド、ショップの企画立案から立ち上げ、運営まで幅広いコンサルティングを展開している。


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