vol.6-1 NPO法人バーンロムサイジャパン 名取美穂さん
“かわいそうだから”ではなく、わくわくしたり、嬉しかったり、そういうプラスの気持ちが根底にある方が、絶対に持続するはず。
1999年、タイ北部のチェンマイ郊外に、HIVに母子感染した孤児たちの生活施設として「バーンロムサイ」は設立された。寄付だけには頼らず、自立した運営も目指し、始まったのが“ものづくり”。鎌倉のお店に足を運ぶと、色鮮やかな古布を使って作られたポーチやお財布、美しいストール、子どもたちの絵が表紙に描かれたノートなどが並び、とても気持ちのいい店内。「まずはワクワクする気持ちのままに、商品を手にとって頂きたい。その後、その商品の裏側にある想いや活動内容にも興味を持ってもらえたらいいなと思っています」そう笑顔で話す「バーンロムサイ」ジャパン代表の名取美穂さん。活動についてお聞きしました。
THINKSディレクター石井なお子さんが、このお店に興味を持ったキッカケは、この古布を使ったお財布。「カメラマンさんがこのお財布を持っていて、可愛い!と思い、ブランドをお聞きしました。そこからお店の活動も知りました。活動内容はもちろんのこと、デザインを重視しているという部分にもとても共感をもったんです」とのこと。
「すごく嬉しいです。それって1番理想的な形かもしれません。この“古布”と呼んでいる布は、チェンマイ山岳地方をはじめ、アジア各地の民族衣装です。衣装をリメイクして作っています。私がチェンマイに魅せられたキッカケのひとつに、この美しい古布の存在もあるんです」と名取さん。
23年くらい前、初めてチェンマイに行った名取さん。たまたまその頃働いていた会社の工場がチェンマイにあり、そこの工場にいたドイツ人マスターのおじいちゃんととても親しくなったそう。そして、ドイツインターナショナルスクールで育ってきた名取さん。学校のスクールドクターの女性が、リタイヤ後にチェンマイでエイズの方々のケアをボランティアで始めていた。こうして、2人のドイツ人の友人を訪ねるために、チェンマイに遊びに行くことに。
「工場のおじいちゃんには市場や工場に連れて行って頂き、そこで古布に出会い、美しさや色の鮮やかさにときめきました。一方、スクールドクターだった女性には、エイズの状況と現実を見せていただきました。当時、チェンマイではHIVが爆発的に増えていて…。その原因には貧困や社会情勢など色々たくさんあり、確実に死に至るという恐ろしい病でした。帰国した後、体調を崩していた母と同居することに。そんな母に、チェンマイの魅力について伝えたところ、翌年母もチェンマイへ。その頃、母はアンティークショップの買い付けの仕事などもしていたので、1,2ヶ月のロングステイを予定していました」
まるで導かれるように、チェンマイへと順番に旅立つ母娘。そこからも、次々と縁が繋がりお母様の滞在はどんどん延びていく。
「その頃はHIVに薬はなく、ただただ死に向かって待つばかり。そこで、母はエイズ感染者の方々に手仕事をお願いするということを始めたんです。その頃、ジョルジオ アルマーニ ジャパンがHIV関連の支援先を探しており、孤児院を立ち上げることに。母はコーディネーターとしての仕事もしていたので、その孤児院をつくるプロジェクトを手伝うことになりました。3週間が3ヶ月、そして3年と、あれよあれよと時間が経ちました。2002年くらいにはようやく治療薬が広まってきて、感染者の方々にも未来があるという状況に一転したんです。治ることはありませんが、発症をおさえてくれるようになったんです。そこで、寄付だけに頼らず、違う形でもお金を生み出したり、ものづくりしたり、活動内容の幅を広げるようになりました」
その頃は海の家の隅に置かせて頂いたり、バザーに出店したり、このお店の前オーナーが取り扱ってくださったりしながら、細々と販売し孤児院の資金に替えていたそう。そこからご縁やタイミングが重なり、現在のお店を譲り受けることに。毎年本当に少しずつ貯金をして、オンラインショップをオープンしたり、ウッドデッキを作ったりしている。
最も転機といえるのが、震災の翌年だそう。日本に大変なことが起こったため、人々の気持ちがそちらに向かい、バーンロムサイへの寄付金がほぼなくなったのだ。
「やっと軌道に乗り始めたかな?と少しだけ思えるタイミングでした。ものづくりなどによって、孤児院の運営費の3割くらいは自分たちでまかなえるようになっていました。でも残りの7割は寄付金。それがほぼなくなったんです。ボランティアや善意に頼ってきていたことを改めて知り、それに頼ってばかりではいけないということも気づきました。でも、お金をたくさんお支払出来るわけでもない。同じ目標に向かって一緒に進める人たちと、一緒に歩んでいくことが大事であるということ。そして、その方々に少しでもきちんとお金を支払い、少しは休んでもらえる仕組みをつくること。そういった部分に改めて気付かされたんです。モノ・コト・気持ちが循環する新しい支援のカタチであって欲しいな、と。実際の現場は、辛く悲しい現実や難しい問題もたくさん。そして、とても重労働でもある。でも、同じ目標を共有出来る人たちだからこそ、出来る限り楽しく笑顔で関わって欲しい。それにはそういう環境を作らなくてはいけないんです」
日本におきた震災。それによって、状況が変わり、気付きがたくさんあったという。バーンロムサイの中での転機に。
vol.6-2へつづく
Edit & Text : Maki Kakimoto
Photo : Nobuki Kawaharazaki Direction : Naoko Ishii
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バーンロムサイ
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