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vol.9 しぜんの国保育園 齋藤紘良さん 齋藤美和さん

November 20, 2020

 

「すべてこども中心」という理念をもとに、既存の教育メソッドには頼らず、子ども一人一人の個性や意志を最大限に生かした独自のアプローチを実践している「しぜんの国保育園」。東京都町田市を始まりとして、今では渋谷区、世田谷区にも新しい園ができ、“子どもと大人が、いきいき暮らす場所”を作り続けているという理事長・齋藤紘良さんと町田市にある「しぜんの国保育園small village」の園長・齋藤美和さんを訪ねた。
 

 

 

 


ドアを開けたエントランスには、入り口までに長いアプローチスペース。このエントランススペースを設けたことには理由がある。
「仕事の顔からお母さんの顔になるには、余白時間が必要。だから少しの時間と距離を持つために、エントランススペースを設けました。それは元々この保育園の代表であった義母の教えでもあるんです」そう美和さんが説明してくれる。
エントランスをこえて一歩足を踏み入れると、U字の廊下を子どもたちが楽しそうに走り、中央には大きな樹が光を浴びて揺れている。そして、美味しそうなお昼ごはんの匂いが給食室から漂う。ここに入った瞬間きっと、迎えに来た親たちもほっと一息つけるに違いない。

 

 

 


 

 

 

理事長でありミュージシャンでもある齋藤紘良さん。町田の園舎を巡ると、建築、アートなどの部屋の中に音楽の部屋もあるが、特別な音楽指導などがあるのだろうか。

 

「それが、全く無いんです(笑) 僕自身の活動が演奏メインではなく作曲メインということもあり、子どもたちに楽器を教え込みたいなどの欲望はありません。どのようなジャンルでも好きだと思う子が好き勝手に楽しんでくれたらいいと思っています。その為にいくつか場を用意してあるというだけ。音楽を学ぶというより、生活の音に対して子どもたちが想いを馳せられるようになったら嬉しいかもしれないです。聞くとか見るとか感じるとか、そういったものを自分なりに深めていく時間ってとても大切だと思っています。この時間の風が気持ちいいなぁとか、この部屋はこんな音が聞こえてくるんだなぁとか、そういうことって、余分な時間(=暇な時間)がないと感じられないことだと思うので」

 

 

 

しぜんの国保育園では、当たり前と思われている行事を一つ一つ改めて見直している。そのことで他の園にはある行事が無いことも。

 

「行事があることで、保育士も子どもたちも忙しくなってしまい、先ほどお話ししたような“余分な時間”がどんどん削られてしまうんです。最低限に減らすことで、暇な時間が増えました。6月に「街歩き」という街の中へ出ていって歩いて自分で遊びを見つけるという行事みたいなものもあります。運動会も、思い切ってやめました。運動会はついつい完成度を求めてしまうので、練習に励んでしまうんですよね。そうして保育士が忙しくなり、大人が忙しいということは子どもに向き合う余裕がなくなっているということ。それって本末転倒なんじゃないかなぁと。どこか大人の基準に合わせた成果を求めて練習するのならその時間に子どもたちと向き合ったり、暇な時間を楽しんだりしていて欲しいなぁと思ったんです。園で過ごす時間をどう作っていくかを子どもを含めてみんなで日々考えているんですけど、そこは家庭の時間とどう結びつけるかも大切で、園の時間と家庭の時間を断絶させたくはないんです。そこで活躍するのが、保護者と保育士が交換している『学びの記録』。3ヶ月に1度交換しているのですが、家庭でやっている遊びや、家でどんなことに興味を持っているのか、などを教えてもらって、その続きを園でやったりもしています」

 

 

 

 

 

「特別なことをしているのではなく、違和感を感じることを見直したり、子どもを中心に考えるようにしているだけ。」そう齋藤さんは話すが、子どもにとって学びや感じることはとても多いのではないだろうか。

 

「しぜんの国保育園に通っている子たちは、自分の意見を尊重されるので、その分自分の意見をコミュニティ内に反映させるということに違和感を感じないのではないかと思います。喧嘩もよくします(笑) 喧嘩というのは自分の違いを主張出来るということだと思います。まだまだ取り組んでみたいこと、変えていきたいことは尽きませんが少しずつ。他国の保育を見たり学んだりしたことで思いましたが、日本の保育はかなりレベルが高い。ケアする、命を守る、というところでは世界でも有数なんじゃないかな。それがリスク回避の圧というものに変わってしまっている部分もありますが。日本の保育士たちの動きの速さはさながら“忍者”みたいです。日本は保育に関しては先進国だと思いますよ」

 


しぜんの国保育園には様々な大人が働いている。ダンサーの人が保育士として働いていたり多種多様であり、そのおかげで、その人それぞれが得意なものを子どもたちに教えることができる。

 


「楽しそうな大人を子どもたちが日常的に見ることで、大人になっても楽しそうだなとか、大人になってもリラックスして仕事できるんだなとか、そういう大人への憧れ、自分の未来への憧れ、そういったものが広がっていくのはいいですよね。もちろんきっと保育士たちには悩みもたくさんありますけど、それは子どもにまつわるものがほとんどだと思うので、それを幸せというか不幸せというか、というのは人それぞれなんじゃないかなぁ。ただ、子ども以外のことで悩むこと、例えば園内での人間関係とか、子どもを介さずに悩むことがあれば、それは園長と僕が全力で解決していくようにしています。保育士も子どももどちらも心地よい環境でいて欲しいですから」

 

 


 

「エコ」や「地球に優しく」など、そういった教育は、しぜんの国保育園としてはどう
伝えていこうと齋藤さんは考えているのだろう。

 

「関係性ですかね。地球規模の話は、普段は僕も考えていない。考えていないというわけではなく、普段の所作には現れていないと思うんです。だから、子どもたちにも伝えるという機会はあまりありません。というよりも、“ひとつひとつのモノに対しての関係性をどう作るか”が大事だと思うんです。僕も無駄なことはしたくないので、紙を使うなら裏紙を使うことが多い。でも伝えたいのはそこじゃなく、再利用する紙と、人工物でつくったものとの「違い」はどこにあり、そこに対してどういう向き合い方ができるのか?という部分を、頭で考えながら感じて欲しい。触れてみたり、透かしてみたり、そこに絵を描いてみたりしながら自分で感じていく。もしかして食べてみるとかね(笑)そういう実体験を通して少しずつ知ってもらえるのではないかなぁと。それから更にそれがゴミになり、どうなっていくのかまた想像してもらえたら。気になるなら、みんなで焼却炉行ってみようか、とか。そうやって関係性ができていくと、それに対して子どもたちが自分たちなりに想いを馳せる。その後に、自分たちでそれぞれ判断をしていけばいい。判断できずに気づかないまま使っているのなら、それはもったいないから、まず関係性を作ってあげるのが大人の役目かなぁと思っています」


 

 

 

 

 

Edit & Text : Maki Kakimoto
Photo : Aya Sunahara
Direction : Naoko Ishii

 

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